タイ「理数系(STEM)教育を通じたリーダーシップ育成事業(第2期)」2年次が終了しました
当財団は、主に日産自動車様およびタイ日産様のご支援を得て、CAREのタイ事務所であるRaks Thai Foundationとともに、2017年4月よりタイにて中高生を対象にした理数系(STEM*)教育を通じたリーダーシップ育成事業を展開しています。新規7校を含む全16校の子どもたちを対象とした第2期2年次の活動終了にあたり、1年間の活動についてご報告します。
2年次の活動に参加した中高生は10,787人(うち女子5,229人)、そして教師は553名(うち女性401人)となり、寄付者をはじめ保護者や地域の皆さま、また事業パートナー団体など、多様な協力者の皆さまとともに、たくさんの子どもたちに支援を届けることができました。本当にありがとうございました。
*STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉。
コロナ禍でほとんどの活動が延期となった1年次。試行錯誤の1年間を経て、2年次は、主要な研修プログラムのオンライン化を実現しました。また、各校30人程度の生徒と教師らをメンバーとするLINEグループを設定し、対面に限らず日常的なコミュニケーションを促進。生徒からの活動に関する質問にはCARE職員がオンラインで回答するなど、あらゆる可能性を検討しつつ、子どもたちの学びを支援しました。
例えば、16校の中高生487人(うち女子298人)を対象に、75人の教師(うち女性63人)も参加して行ったユース・リーダーシップ研修。対面での実施は1回のみで、他12回はすべてオンライン研修に切り替えての実施となりました。子どもたちは、オンライン形式での講義やグループに分かれてのワークなどを通じて、論理的思考や問題解決方法を学習しました。さらに、ジェンダー平等研修も同時に行われ、生物学的な性(Sex)、社会的・文化的に形成された性差(Gender)、性的指向や性自認など人間の性のあり方(Sexuality)への理解を深めるとともに、多様性を尊重し、違いを認め協力する大切さも学ぶ機会を得ました。
▲対面での研修や授業よりも発言しやすいと感じる生徒が多く出現。オンライン学習ならではのメリットも。
子どもたちの環境意識を育て理科離れを改善するため日産自動車が国内外で取り組んできた「日産わくわくエコスクール」を参考に、STEM教育を専門とするGalileo Teamとも連携して、タイ版の環境教育プログラムを新しく構築。理数系教育にクリエイティブの視点も加味したSTEM+C(Science, Technology, Engineering, Math and Creative)キャンプの一環としての導入を図りました。そして、2年次においては、サムットプラカーン県とアユタヤ県の2校の子どもたち141人(うち女性91人)が参加しました。
光合成によって二酸化炭素を吸収し、温室効果ガスの一つである二酸化炭素を減らして、地球温暖化を抑えるはたらきが期待される「植物」。タイでは、特にモンステラなど斑点のある植物の人気が高く、高値で取引される商品でもあります。この植物の「組織培養」をテーマに、以下のような実験や参加型ワークショップを行い、STEM+Cについて学習しました。
Science(科学):
植物が一定の割合で成長するために必要な栄養素や植物ホルモンなどを、科学的なプロセスに準じて混合。培養液として、滅菌処理したガラス容器に瓶詰。
Technology(技術):
簡易的な自作の測定機器を使用して、温度や湿度の測定・管理。またスマートフォンへのデータ転送により、モニタリングを行うなど、スマート農業(ITを取り入れた農業)について学習。
Engineering(工学):
家庭用の組織培養装置としても使用できるような、小型のプラスティック製滅菌容器を試作。
Math(数学):
組織培養にかかるコスト(費用や人工)の計算を通じて、植物を販売した場合の適正価格や利益を予測する学習。
Creative(クリエイティブ):
上記で試作した培養液と小型滅菌容器を使用して、植物の組織培養実験を実施。
本事業では、リーダーシップやジェンダー、STEM+Cやマーケティングなどに関する研修に参加した生徒らが中心になって取り組む校内での様々な起業体験活動を、彼ら・彼女らの実践の場として積極的に支援しています。
第2期の1年次に新たに選定した7校における起業体験活動の開始は、度重なる休校などにより見送られた一方で、第1期からの対象校のうち数校は、このコロナ禍においても、新入生をメンバーに迎えつつ、様々な工夫を積み重ねながら、意欲的に学校での起業体験活動の継続を試みました。
ラヨーン県の、ある学校では、パンの製造と販売を行うグループの子どもたちが、休校時でもオンラインで教師のサポートを得ながら自主的に活動を続けたことが評価され、同校はタイで優れた教育活動を行う学校に与えられる「Royal School Award」を受賞しました。またアユタヤ県の別の学校では、同じくパンの販売を行うグループの活動が地域の企業の目に留まり、必要な資機材を備えたパン工房を建築するための資金的な支援を得るなど、子どもたちの行動と確かな変化が、地域の大人たちにも影響を及ぼし始めています。
今後、コロナ禍での校内や地域での対面販売機会の喪失を補うべく、オンラインでのマーケティングや商品販売機会などについても模索するなど、子どもたちの試行錯誤はこれからも続きます。
▲日産自動車とCAREのロゴが配されたお揃いのエプロンを身に着けて。商品のカップケーキを見せてくれた生徒たち。
第2期で選定した新規校を含め、各種キャンプでの研修プログラムや校内での起業体験活動の支援などに取り組みます。そして、コロナ禍の影響を受け、1年次、2年次に延期となった活動も多い中、常に、対面での実施が困難な場合を想定して、オンラインでの実施計画も併せて準備していくなど、より柔軟に対応できるよう、現場での活動を日本からもサポートしてきます。
また、6年間にわたる本事業が終了した後も、子どもたちの自主的な活動が継続されるよう、教師へのトレーニングやマニュアル作成、また対象校同士のつながりの強化などを通じて、活動へのさらなる理解と積極的な参画を促していく予定です。
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